ウィズ・コロナ時代の健康管理と医療機関受診の心構え

2020.11.02

ウィズ・コロナ時代の健康管理と医療機関受診の心構え(令和4年11月13日改訂版)
~相模原市医師会から市民の皆さまへの大切なメッセージ~

相模原市医師会

(PDF版はこちら)

 新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)は感染予防の習慣化とワクチン接種の普及により、いったんは終息の兆しがみえました。しかし、その後も変異種のオミクロン株の流行とともに、爆発的な流行を繰り返しております。ワクチン接種もすすみ、新しい治療薬も使用できるようになりましたが、COVID-19の根絶は困難であり、これからはこのウイルスと共存し、いかに大流行を抑えつつ、経済活動を回していくウィズ・コロナの時代を歩まざるをえません。市民の皆さんもCOVID-19に心配しながら、不安な毎日を過ごしているのではないでしょうか。どのような症状があったら医療機関を受診したらよいのか?コロナの検査で陽性だったらどうしたらいいのか?など多くの不安、疑問があると思います。今回ウィズ・コロナの時代における健康管理と医療機関の受診の心構えについて解説します。

 

(1)急な発熱! まずは「あわてないで状態を観察」
 COVID-19の症状には発熱、咳の他に、咽頭痛、倦怠感、味覚・嗅覚異常、下痢、吐き気などさまざまな症状があります。特徴的な症状はないために、かぜやインフルエンザなど他の病気、夏季なら熱中症との区別が困難です。またオミクロン株では発熱もなく、咽頭痛、咳のみの場合もあります。急に熱が出た場合でも、あわてないで、冷静に状態を観察してください。一般的にオミクロン株では重症化はまれです。重要なことは、発熱以外に重症化の危険なサインがないかに注意することです。具体的には呼吸困難、意識障害などです。乳幼児の場合は顔色不良、呼吸困難(乳児ではミルクの飲みの著しい低下)などの症状です。危険なサインがあれば医療機関に連絡、場合によっては、救急車の要請が必要になります。
 基礎疾患のない若年者では、危険なサインがなければ、発熱があっても、自宅安静や対症療法(冷却や消炎鎮痛薬)で少し様子をみてください。一方、高齢者では発熱がなく、食欲低下や元気がないなどで発症する場合もあります。また当然のことですが、発熱はCOVID-19以外のさまざまな病気が原因になります。体調が悪い状態で、迷ったらまずはかかりつけの医療機関にお問合せください。かかりつけ医がない方、どこの医療機関を受診したらよいかわからない場合は下記の「新型コロナウイルス感染症相談センター」に連絡、相談してください。また神奈川県では発熱診療を実施している医療機関を公開しておりますので、参考にしてください。

神奈川県内で発熱診療を実施している医療機関一覧 - 神奈川県ホームページ (pref.kanagawa.jp)

 

 COVID-19_20221129_01.png

 

 抗がん剤や免疫抑制剤を使用している方では発熱があった場合はまず、通院中の医療機関に連絡してください。現在治療中の病気が悪くなっているのか、免疫能力低下のために、感染症を併発しているのかにより、対応、治療が変わります。
 相模原市の夜間休日急病診療所(メディカルセンター急病診療所)は一時的な応急処置はできますが、できる検査は限られております。また十分な感染症対策が必要な発熱患者さんや、重症患者さんが受診すると、待ち時間が長くなる場合があります。熱が出たからといってすぐに受診せず、危険なサインがなければ、まずは自宅安静、対症療法で様子をみることをお勧めします。

 

(2)自宅安静(ステイホーム)の重要性
 発熱のみならず、体調が悪ければ、無理に外出しないで、自宅で安静にし、可能な限り同居者と別室で隔離してください。これは、もしCOVID-19を含めた感染症であった場合、周囲への感染拡大予防のためはもちろんですが、一般的に感染症の治療では安静、水分補給、栄養が大切だからです。なるべく安静にすることで、治癒が早くなります。忙しいから休めない、代わりがいないから休めないという考えは、これからの時代、個人も職場も変えていかなければいけません。

 

(3)発熱で受診する際は事前に連絡を
 発熱で受診する時には、必ず医療機関にお知らせください。受診日には解熱していても、いつから熱があったかなどの情報が重要です。現在、多くの医療機関では新型コロナウイルス感染予防のため、発熱の患者さんについては、他の患者さんとの接触を避け、診察室を別にしたり、診察時間を調整したりと工夫しております。診察時間を調整している医療機関には受診前に電話などでご連絡ください。また発熱の患者さんの診察後は、診察室の消毒、換気など環境整備に時間を要します。医療機関側も準備が必要なために、ぜひご協力をお願いします。

(4)COVID-19の検査について
 COVID-19の診断には現在、PCR検査、抗原検査が可能になっております。それぞれの検査は目的、特徴が異なります(表1)

 

表1 COVID-19の検査

 

PCR

抗原(定量)

抗原(定性)

検体採取

鼻咽頭、鼻腔、唾液

鼻咽頭、鼻腔、唾液

鼻咽頭、鼻腔、唾液

有症状者の注意点

発症10日目以降では

唾液は不適

発症10日目以降では

唾液は不適

発症10日目以降では

不適

無症状者の注意点

鼻腔は不適

鼻腔は不適

不適

感度

高い

高い

キットにより

差があり

検査機器の配備

必要

必要

不要

結果までの時間

1~5時間(流行期には

1~3日要する場合あり)

約30~40分

約15~40分

 

 現在の感染の有無を知るためのもっとも精度が高い検査はPCR検査ですが、それでも偽陰性(感染しているけど検査は陰性)の場合があり、陰性だからといって必ずしも安心とは限りません。COVID-19患者と濃厚接触がある方、症状があり医師がCOVID-19を疑った方などについては、保険診療でのPCR検査の適応になります。無症状で検査を希望する場合は、市内の無料検査事業機関で検査を受けることができます。

検査無料化事業について - 神奈川県ホームページ (pref.kanagawa.jp)

またセルフ抗原検査キットも市販されており、常備しておくとよいでしょう。その際は研究用でなく、信頼性の高い医療用または一般用の使用をお勧めします。

 

(5)COVID-19と診断されたら

 医療機関が保健所に届出が必要な発生届対象者と届出不要の発生届対象外の方で対応が異なります(表2)。発生届対象者では、セルフ抗原検査キットや無料検査事業機関で陽性であった場合、必ず医療機関(発熱診療等医療機関)に連絡し受診してください。受診できる医療機関が分からない場合は、「新型コロナウイルス感染症相談センター」にご相談ください。届出対象外の方では、症状が軽ければ、医療機関を受診しなくても、自宅療養は可能ですが、症状が悪化するなら、医療機関にご相談ください。自己判断で陽性を放置すると、周囲の人々への感染の危険性が高まり、また重症化した際、搬送、入院の対応に支障をきたします。陽性であってもあわてず、保健所と医療機関の指示に従ってください。COVID-19の治療法はだいぶ進歩しました。またワクチン接種されている方は重症化リスクが低くなります。保健所と医療機関が連携し、重症度、基礎疾患、社会的背景など、総合的に判断し、自宅療養か、施設療養か、入院加療かの方針を決定します。発症日の翌日から7日間経過し、かつ症状軽快後24時間経過した場合で療養終了になります。

 

COVID-19_20221129_02.png

 

1)神奈川県療養サポート登録方法 ⇒「新型コロナウイルス感染症 自宅・宿泊療養のしおり」に記載
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/61069/shiori_18kousin_web.pdf

アクセスできない場合は、神奈川県新型コロナウイルス感染症自宅・宿泊療養のしおりで検索してください。

2)新型コロナ陽性者発生者登録窓口
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ga4/covid19/ms/registration.html 

 COVID-19の加療後、感染の危険がなくなっても、全身倦怠感、咳、息切れ、味覚障害、嗅覚障害、脱毛、頭痛、関節痛、記憶障害、下痢など多彩な症状が長引く場合があります。いわゆるコロナ後遺症の状態ですが、まずかかりつけ医にご相談ください。現時点で特効薬はありませんが、必要であれば複数の診療科、医療機関と連携し対応します。

(6)現在、通院中の方は治療を続けて
 慢性疾患等にて定期的に通院されている方の中に、COVID-19が怖くて、医療機関の受診を控えて、治療を中断してしまう方がいらっしゃいます。現在治療中の病気が治療中断により悪くなることは、かえって新型コロナウイルスに感染しやすくなります。たとえば糖尿病で治療を中断し、血糖が上がってしまうと免疫機能は低下します。現在受けている治療は必ず継続してください。現在、各医療機関は十分な感染症対策を行っております。安心して受診してください。不安がある方は、電話再診やオンライン診療も可能な場合がありますので、かかりつけ医に問い合わせてください。
 抗がん剤や免疫抑制剤を使用されている方は、現在の病気の状態を把握している主治医の指示に従ってください。
 治療中の病気の管理を疎かにしていると、病気の悪化や合併症を起こしやすくなります。たとえば高血圧の治療を中止した場合、脳卒中、心筋梗塞など命に関わる病気を併発する危険性が高くなります。流行拡大時に医療体制がひっ迫した中で、そのような病気になっても、受け入れ医療機関が見つからない場合が生じてくる可能性があります。現在治療中の病気はしっかり治療を継続し、安定した状態を維持しておくことが重要です。

 

(7)ワクチン接種と自己管理で感染予防を
 新型コロナウイルスワクチンは、感染と重症化のリスクを低下させる効果があることは明らかです。接種後の発熱、まれにアナフィラキシーなど副反応はありますが、多くは一時的なものです。副反応の危険性よりもワクチン接種の有益性のほうが高いため、健康上の理由などがない限り、接種を推奨します。ワクチン接種後も時間がたてば、抗体価は下がり、効果が弱くなります。接種後の感染(ブレークスルー感染)もありますので、いままでどおりの感染予防対策を励行してください。なお、現在、3~5回目はオミクロン株対応ワクチンになっております。
 感染予防には、体調を整えて、免疫を良好な状態に保つことが重要です。一般的には十分な睡眠、栄養、休養、適度な運動、ストレスの回避などです。また高齢者では肺炎球菌ワクチンの接種を、小児では種々の定期接種ワクチンを計画どおりに接種し、ワクチンで予防できるCOVID-19以外の感染症対策をしておくことが大切です。特に冬になるとインフルエンザウイルスの流行も重なってきます。この時期に発熱があると、COVID-19との区別も難しくなります。インフルエンザワクチンについては、今まで接種していない方も接種したほうがいいでしょう。
 毎年受けている検診についても予定どおり受けて、現在の体調を把握し、病気の早期発見に努めてください。
 喫煙は新型コロナウイルス感染の危険性が高まります。感染予防と喫煙に関連する病気の予防、両方の目的のために、この機会に禁煙しましょう。

 

(8)科学的根拠のない情報に惑わされないで
 COVID-19について日々、めざましい研究成果が出ております。しかし、不明なことがまだ多いために、さまざまなメディアやSNSで多くの情報が拡散されております。しかし科学的根拠のない情報には惑わされてはいけません。今後、検査法の進歩、ワクチンや治療薬の開発を含め、新しい知見が進めば、常識とされていたことも、変わる可能性もあります。現時点では冷静に今までどおりの感染対策を徹底してください。

 

(9)感染者、ワクチン未接種者に対する偏見や差別をなくそう
 COVID-19患者、あるいは健康上の理由など様々な事情でワクチン未接種の方々に対する根拠のない偏見、差別は多くの人々を傷つけるだけです。いくら気をつけても、誰にでも感染する可能性はあります。このような状況だからこそ、お互い思いやりの気持ちを大切にしたいものです。ウィズ・コロナ時代は個々の人間力が試される時代です。